夏や冬に欠かせないエアコン。しかし、身近な存在である一方、エアコンが原因となる火災が毎年数百件も発生していることをご存じでしょうか?消防庁のデータによると、2022年には全国で363件の「エアコン火災」が発生しており、年々そのリスクが注目されています。
本記事では、エアコン火災の件数や実際の事例、考えられる主な原因を詳しく解説するとともに、家庭でできる対策や万が一の初期対応方法までを網羅的にまとめました。安全・安心な暮らしのために、ぜひ参考にしてください。
目次
エアコン火災が増加中!年間発生件数と世間の実態
最新データで見るエアコン火災件数の推移
総務省消防庁が公表している「火災の実態」によると、エアコンを原因とする火災は毎年300件以上発生しています。2022年には363件、2021年は318件と、わずかですが増加傾向が見られます。
この数字は、放火やタバコによる火災に比べれば少ないものの、「日常的に使用する電化製品」から出火する点で、誰の家庭でも起こりうるリスクであることを示しています。
身近に潜む火事リスク―実際に起きた火災事例
例えば、2023年夏に東京都内で発生した火災では、20年以上使用していた壁掛けエアコンの内部から出火。幸い初期段階で消火されましたが、火元がエアコンと分かるまでに時間がかかりました。
また、過去には室外機周辺に放置された可燃物に熱がこもって出火した事例や、コンセント周りのトラッキング現象による発火も報告されています。
なぜ注目される?古いエアコンの危険性と事件報道
エアコン火災の多くは、10年以上使い続けている古い機種が関係しており、部品の劣化やホコリの蓄積、断線などが主な原因とされています。経年劣化によって内部モーターや配線が発熱・発火しやすくなるため、火災リスクが高まるのです。
一部の報道では、リコール対象となった製品をそのまま使い続けたことによる事故も取り上げられており、メーカーの発表を見逃さないことも重要です。
家庭で知っておくべきエアコン火事の主な原因
内部部品やモーターの劣化による発火メカニズム
エアコン内部には、冷却や送風のためのモーターやコンプレッサーなど、多数の電気部品が組み込まれています。これらの部品は、経年劣化や熱によるダメージを受けることで絶縁不良やショートを起こし、発熱・発火につながるリスクがあります。
特に10年以上使用している機器では、内部配線の皮膜が剥がれやすくなるなど、安全性が著しく低下していることも少なくありません。
配線や電源コードの断線・ショートがもたらす事故原因
エアコン本体だけでなく、電源コードや延長コードなどの周辺部品も発火原因となる可能性があります。断線や破損したままのコードを使い続けると、ショートやトラッキング現象を起こし、火花が発生しやすくなります。
また、タコ足配線や古い延長コードの使用は過電流を引き起こす危険があり、火災リスクを高める要因になります。
室外機や周辺の『侵入』『詰まり』が及ぼす影響
屋外に設置される室外機は、落ち葉やゴミ、ペットの毛などの侵入によって目詰まりを起こすことがあります。これにより内部温度が異常上昇し、冷却ファンの停止や部品の焼損が発生することがあります。
さらに、室外機の排気口をふさいでしまうと熱がこもりやすくなり、火災発生のリスクが高まります。
つけっぱなしが招く危険―安全運転と出火原因の関係
最近は「つけっぱなしの方が省エネ」とも言われますが、長時間の連続運転はモーターや電源周りに過負荷をかけることにもつながります。特に古い機種やメンテナンスが不十分な場合は注意が必要です。
「焦げ臭いニオイがする」「運転中に異音がする」といった初期症状を見逃さないことが、火災予防には非常に重要です。
エアコン火災を防ぐための対策と日常の注意ポイント
室外機周辺の安全確保と異物侵入対策
エアコン火災は屋内機だけでなく、屋外に設置された室外機が原因で発生するケースもあります。特に、室外機の内部に落ち葉・虫・ナメクジ・ペットの毛などが入り込むことで、電子基板がショートし、発煙・発火する危険性があります。
また、室外機の吹き出し口や吸気口を物でふさぐことは厳禁です。最近では、室外機の近くに置かれた可燃物(段ボール、自転車カバー、ベビーカーの布製品など)に熱がこもり、延焼して火災に発展する事例が報道されました。
室外機の周囲は50cm以上の空間を確保し、季節の変わり目には内部の清掃や異物侵入のチェックを行うことが重要です。
エアコンには「専用回路」が必要!延長コードはNG
エアコンは高出力の家電製品であるため、家庭の分電盤から直接つながった「専用コンセント(専用回路)」が推奨されていることをご存じでしょうか?
具体的には、国が定める「電気設備に関する技術基準を定める省令」、日本電気協会が定める「内線規程」およびメーカーの据付説明書に従って施工し、専用回路を使用することとされており、この内線規程では、定格電流が10Aを超える据置形の大型電気機械器具については、専用の分岐回路を設けることが推奨されています。これは過電流や異常発熱を防ぎ、火災リスクを最小限に抑えるためです。多くの家電量販店や電気工事業者では、エアコンの設置に際して専用回路の設置を推奨しており、場合によっては専用回路がないと設置を断られることもあります。
実際に筆者は、何年か前にエアコンを交換する際に工事を断られました。正確には我が家が建った時点では、6畳用のエアコンでは専用回路の規定がなく、通常のコンセントから電源を引いていたらしいのですが、買い替える時点では電気工事業者の取り決めで施工できなくなっており、ブレーカーから新たにコンセントを引き込む工事をしてもらいました。
確かにそれまではエアコンをつけると、部屋の照明スイッチが発熱する事象があり、タコ足配線についても身に覚えがあったので、多少お金がかかっても(たしか1.5万円くらいでした)工事してもらってよかったなぁと感じています。実は筆者は電気工事士2種の資格も持っていて、資格上は工事をしてもいいのですが、そんな事実は工事を依頼した時点で、まったく知らなかったのです。法令以外にも遵守すべき規定というのは、常に専門でやっている方にしかわからないことだなぁという大変貴重な経験でした。
市販の延長コードや電源タップを介してエアコンを使用することは絶対に避けましょう。また、古いコンセントや差込口がゆるくなっている場合も、プラグが不安定になりトラッキング現象を引き起こす可能性があります。
定期的なフィルター掃除と内部クリーニング
エアコン内部の汚れやほこりは、冷却性能の低下だけでなく、モーターや電気回路の発熱・引火にも直結します。特に、油分を多く含むキッチン近くのエアコンは、汚れが燃えやすくなっているため注意が必要です。
月1回のフィルター掃除を基本に、年1回は専門業者による分解クリーニングを検討しましょう。ファンや熱交換器の奥に詰まった汚れは、一般家庭では取りきれないため、プロの手を借りることでより安全になります。
製品リコールや旧型機種の確認を忘れずに
エアコン火災は製造不良によるものも含まれます。過去にはリコール対象となった機種を使い続けたことで火災が発生した事例もあるため、お使いの製品の型番を一度チェックしてみましょう。
製造から10年以上経過したエアコンは、安全部品が劣化している可能性が高く、メーカーも交換や買い替えを推奨しています。型番が分かれば、経済産業省の製品安全ガイドや各社の公式サイトで確認できます。
取り付け工事は必ず有資格業者に依頼
新設や買い替えの際、費用を抑えようとして無資格の業者や自己施工を選ぶのは非常に危険です。冷媒配管の締め付け不足・電源接続のミス・漏電などが発生すると、重大な火災事故につながりかねません。
設置は必ず電気工事士など資格を持つ業者に依頼し、「専用回路」「適切な容量のブレーカー」「正しいコンセント形状」の設置を徹底してもらいましょう。
火事発生!エアコンから発火したときの対応・消火方法
初動対応の基本―電源の遮断と消火器の使い方
エアコンから発煙や発火が確認された場合、まずは電源プラグを抜くか、ブレーカーを落として電源を遮断してください。電源が入ったままだと、火災が拡大する恐れがあります。
次に、粉末式または二酸化炭素(CO₂)式の消火器を使用して消火を試みます。水をかけると感電や火災の拡大につながる可能性があるため、絶対に水を使用しないでください。
消火が困難な場合や不安がある場合は、すぐに避難し、119番通報を行ってください。
煙や異臭がしたら?発生時の安全な避難行動
エアコンから焦げ臭いにおいや異常な音がする場合、内部で異常が発生している可能性があります。
- 速やかに電源を切る。
- 窓を開けて換気を行う。
- 異常が続く場合は、使用を中止し、専門業者に点検を依頼する。
万が一、煙が充満している場合は、低い姿勢で避難し、口と鼻を濡れたタオルで覆うなどして、煙を吸い込まないように注意してください。
専門機関への連絡と報告の手順
エアコンの火災や異常が発生した場合、以下の機関への連絡と報告が必要です。
- 消防署:火災が発生した場合は、速やかに119番通報を行い、指示に従ってください。
- 電力会社:電気設備に関する異常があった場合は、地域の電力会社に連絡し、状況を報告してください。
- エアコンのメーカー:必要により、製品に関する不具合や火災が発生した場合は、メーカーのカスタマーサポートに連絡し、対応を相談してください。
また、火災保険に加入している場合は、保険会社にも連絡し、必要な手続きを確認してください。
よくある質問Q&Aと誤解されやすいポイント
Q1. エアコンをつけっぱなしにすると火災のリスクが高まりますか?
エアコンを長時間つけっぱなしにすること自体が直接的な火災の原因になるわけではありません。ただし、以下のような状況ではリスクが高まります:
- 内部のホコリや汚れが蓄積し、通気が悪くなることで過熱する場合。
- 古いエアコンで部品が劣化している場合。
- 延長コードやタコ足配線を使用している場合。
定期的なメンテナンスと適切な使用方法を守ることで、火災のリスクを低減できます。
Q2. エアコンの専用コンセントは本当に必要ですか?
はい、必要です。エアコンは高い電力を消費するため、専用のコンセント(専用回路)を使用することが推奨されています。
一般的なコンセントや延長コードを使用すると、過負荷や過熱による火災のリスクが高まります。
新築住宅では2000年頃より内線規定で義務化されており、エアコンの安全な使用のためにも専用コンセントの設置が望ましいです。
Q3. エアコンの掃除を自分で行っても大丈夫ですか?
フィルターの掃除など簡単なメンテナンスは自分で行っても問題ありませんが、内部の洗浄や分解は専門業者に依頼することをおすすめします。
不適切な洗浄や分解は、内部の電気部品に水分が付着し、ショートや火災の原因となる可能性があります。
Q4. 室外機の周囲に物を置いても大丈夫ですか?
室外機の周囲には、ダンボールや紙類などの可燃物を置かないようにしてください。
また、室外機の排気口を塞がないようにし、通気を確保することで、過熱や火災のリスクを防ぐことができます。
Q5. 古いエアコンは買い替えるべきですか?
エアコンの寿命は一般的に10~15年とされています。
古いエアコンは部品の劣化や性能の低下により、火災のリスクが高まる可能性があります。
定期的な点検や、必要に応じて新しいエアコンへの買い替えを検討してください。
安心・安全のために家庭でできる総まとめチェックリスト
日常点検の習慣化で防ぐ火事リスク
- エアコンの電源コードやプラグに焦げ跡や異常な熱がないかを確認する
- フィルターの清掃を月に1回以上行う
- 運転中に異音・異臭・異常な振動がないかをチェックする
- 室外機の周囲に可燃物がないか定期的に確認する
プロによる安全診断・長期利用時の備え
- 使用年数が10年以上経過したエアコンは点検または
買い替えを検討する
- 内部洗浄やガス漏れチェックは専門業者に依頼する
- 設置状態や配線が不安な場合は電気工事士による確認を受ける
- 火災保険の対象範囲に家電の火災が含まれているか定期的に見直す
エアコンは正しく使えば便利で安全な家電ですが、メンテナンスを怠ると火災につながるリスクもあります。ご家庭での点検と、必要に応じた専門家のサポートを活用しながら、安全に使用しましょう。
今回の記事は安全面でエアコンの使用・交換について書いてきましたが、下記の記事ではコスト面でエアコンの交換時期について書きましたので、よろしければご覧ください。
古いエアコンを使い続けると損?年式別・サイズ別の電気代を徹底比較
リサイクルショップを活用して、賢く買い替えよう!
せっかくエアコンを買い替えるなら、今使っているエアコンをリサイクルショップで売却して、新しいエアコンの購入費用に充てるのもおすすめです。
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古すぎるものは価格がつかない場合もありますが、引っ越しや買い換えでエアコンを処分したい方はリサイクルショップでの売却も検討するといいでしょう。